企業年金に関する提言 ~健全な財政運営を目指して~

平成12年9月8日
社団法人日本年金数理人会

我が国の企業年金は、公的年金とともに、退職後の所得の保障を担う制度として、その役割・重要性が今後ますます増大していくものと考えられる。
このため、企業年金については、年金給付の受給権を保護していくことをはじめ、制度の整備を行い、より確実な給付が保障されるようにする必要がある。
しかしながら、現行の厚生年金基金と適格退職年金では、その受給権保護の仕組みが大きく異なっており、企業年金制度としての統一的な枠組みの構築が不可欠である。
こうしたことから、企業年金制度の充実に向け、年金受給権の確保や制度の管理運営に携わる者の責任の明確化等、各制度に共通するルールを包括する企業年金法の制定に向けての検討が行われている。
日本年金数理人会は、企業年金財政の専門家の立場から、企業年金法の早期の法制化を願うとともに、法制化にあたっての受給権確保の方策、財政運営方法等について、提言を行うこととした。

  1. 企業年金法制定の目的は、企業年金における年金受給権の確保を図ることにあると考えられる。これを確実なものとしていくためには、企業年金の健全な財政運営が不可欠であり、その裏付けとなる積立金の確保を含め、以下の具体的仕組みを法定化することが必要である。
    1. 統一的な財政運営の基準として、年金制度の継続を前提とし将来にわたって支給すべき給付を賄えるように必要な資産を積み立てて行くための基準(継続基準)のほか、年金制度の継続を前提としない発生済みの給付に見合う資産を積み立てるための基準(非継続基準)を導入すること。
    2. 企業年金の管理運営に携わる者については、その役割に応じた権限と責任範囲を明確化すること。
    3. 財政検証を行う年金数理人の役割と責任を明確にし、新たに企業年金全体を対象とする年金数理人制度を導入すること
    4. 企業年金の給付については、終身年金や有期年金等、ライフスタイルに応じた多様な選択ができること。
  2. 企菜年金法の制定にあわせて、厚生年金基金制度における代行制度の位置づけを明確化した上で、代行部分に係る財政のあり方の再検討を行うことが必要である。
  3. 公的年金と共に退職後の所得保障を担う制度として、企業年金の一層の発展を図るため、企業年金税制の蟹術を行い、税制の支援策をより充実することが必要である。

この他、加入貝等への制度遺制関する情報開示は、受給権確保のために重要であり、その制度化を推進する必要がある。
更に、企業年金加入者のニーズに応じて、制度間移動に伴う年金給付原資の合算制度についても、検討が必要である。
また、小規模企業への企業年金普及の観点から簡便な財政運営基準を検討する等の工夫も必要である。

なお、支払保証制度には様々な課題もあり、その制度化については十分な検討が必要である。

以上

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