退職給付会計における厚生年金基金の代行部分の取扱いについて
平成13年5月29日
社団法人 日本年金数理人会
確定給付企業年金法案は平成13年2月20日に閣議決定され、現在国会で審議されている。
この法案が成立すれば、厚生年金基金は厚生年金の代行を行わない確定給付企業年金に移行することにより、これまで基金が負っていた代行給付の支給義務を国に移転できることになる。
日本年金数理人会は、これまでも厚生年金基金の代行部分に関し、年金制度の財政運営の観点から「企業会計における代行部分の取扱い」について、また企業間の公平な比較の確保の観点から「企業会計における代行部分の情報開示」についての意見を述べてきた。
このたびの確定給付企業年金法案が成立すれば、厚生年金基金制度における代行部分の位置付けが抜本的に改正され、企業会計における代行給付の取扱いについての基本的な前提が変更されることになるとの認識のもとで、当会としての意見をまとめ、広く公表することとした。
記
1.確定給付企業年金法案は企業会計における代行部分の取扱いの「基本的な前提を変える制度改革」である。
- 確定給付企業年金法案が成立すれば、厚生年金基金は、最低責任準備金を国に返還すること(代行返上)により、代行部分の支給義務を国に移転し、代行部分のない確定給付企業年金制度として継続することが可能となる。
- このようにこの法案の成立によって、すべての厚生年金基金は、上乗せ部分の給付を継続した上で、代行部分の公正な評価額である最低責任準備金を国に返還することにより、いつでも代行部分の支給義務を免れることができることになるため、事業主は基金継続時において最低責任準備金を超える負担責任がなくなると考えることが合理的である。
2.このような「基本的な前提を変える制度改革」を受け、退職給付会計の実務指針について、結論を再検討すべきである。
- 「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」(平成11年9月)における「結論の背景」にもとづき、代行部分の退職給付債務に係る会計処理については、上記1.に述べた新たな法制度の整備による「基本的な前提を変える制度改革」という事態を踏まえた再検討を行うべきである。
以上