退職給付会計に関する実務指針(中間報告)の改正案について
平成13年11月28日
社団法人 日本年金数理人会
平成13年11月19日付にて日本公認会計士協会より公開された「会計制度委員会報告 第13号「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」の改正について(公開草案)」に関して、下記のとおり意見を提出した。
記
(意見)
- 公開草案の第61-2項の「なお書き」において、「厚生年金基金の基本的な前提を変える制度変更があった場合」とあるのは、現行の第61項で規定されている「凍結期間が解除されたときに事業主の負担が及ばないこと等、基本的な前提を変える制度改革があった場合」と同じ意味と解釈しても差し支えないものであることを明らかにされたい。
その上で、第61-2項の「なお書き」を次の通り修正されたい。「なお、上記の取扱いは代行部分の返上に必要な手続を実行した場合に限ることに留意する。」
- 公開草案の第47-2項に「代行部分に係る返還すべき額に見合う年金資産が十分に存在する場合」とあるが、どのような場合を指しているのか、又その判定方法はどうするのかを明らかにされたい。
(理由)
- 平成13年6月15日に確定給付企業年金法が公布され、平成14年4月1日以降においては、厚生年金基金は同法に基づき代行部分を返上し、基金型または規約型の確定給付企業年金へ移行することによって、代行部分以外の上乗せ部分の給付を継続することが可能となった。
この場合、代行部分の返上時に国に返還する金額は最低責任準備金と規定されているが、法の附則により現時点でその施行がなされていない。
現在、最低責任準備金については凍結措置がとられており、厚生年金本体の運用利回りを確保すれば、代行部分についての事業主の追加負担は発生しない取扱いとなっている。
当会としては、代行部分の公正な評価額である最低責任準備金が、凍結解除の前後で異なる額とされ、その結果代行部分の返還額が基金によって異なる取扱いとされるような事態は公平性の観点から想定できないものと考えている。
それ故、この法律の公布により、全ての厚生年金基金は、代行部分以外の上乗せ部分の給付を継続した上で、代行部分の公正な評価額である最低責任準備金を国に返還することにより、いつでも代行部分の支給義務を逃れることができるため、事業主は基金継続時においても最低責任準備金を超える負担責任がなくなったと考えることが合理的であるとしてきた。
今回の公開草案は、貴会常務理事が明言されておられるとおり、「早急に公表すべき事項と考えられる厚生年金基金の代行部分返上に関する取扱いについて」のみの改正と理解しており、これまでの規定を変更するものではないことを確認したい。
したがって、現行の第61項で規定されている「凍結期間が解除されたときに事業主に負担が及ばないこと等、基本的な前提を変える制度改革があった場合」の規定内容をさらに限定するかの如き表現については、当会は賛成しがたく、「なお書」の内容の修文をお願いする次第である。 - 代行返上が認められた以上、これを希望する厚生年金基金についての会計処理を定める必要があることは当会も十分承知している。
また、公開草案の第47-2項に記載された「最低責任準備金の算定式が変更される」場合の会計処理方法に関し、かかる事態が発生することを想定することは、当会の判断とは異なるものの、貴会の立場からは極めて合理的な判断であると十分理解できるところである。
ついては、「最低責任準備金の算定式が変更される」ことを前提にした状況の中で公開草案の第47-2項にいう「代行部分に係る返還すべき額に見合う年金資産が十分に存在する場合」とは、どのような場合を指すことになるのか、又その判定方法はどうするのかということを明らかにされることを希望したい。
以上