退職給付会計における厚生年金基金の代行部分の取扱いについて
平成16年7月21日
退職給付会計における厚生年金基金の代行部分の取扱いについて
社団法人 日本年金数理人会
日本年金数理人会は、退職給付会計における厚生年金基金の代行部分の取扱いについて、これまでも年金制度の財政運営の観点から意見を述べてきたが、厚生年金保険法が改正され、免除保険料率の凍結解除および凍結解除後の代行部分に関する負担が明らかになったことから、下記のとおり当会の意見をまとめ公表することとした。
記
1.代行部分の負担の明確化
厚生年金保険法の改正および予定されている政令等の改正の内容が公表され、厚生年金基金は代行部分に関して最低責任準備金を超える積立てを必要とせず、基金を設立している事業主の負担が免除保険料となることが明確になった。
- 厚生年金基金の代行部分は、免除保険料と経過的給付に係る政府負担金に加え、以下のような「過去期間代行給付現価に係る政府負担金」で財政運営が行われ、厚生年金基金は代行部分に関して最低責任準備金を超える積立てを必要としない。
厚生年金基金の決算において、最低責任準備金が過去の加入期間に対応する代行部分の給付現価(以下「過去期間代行給付現価」という。)の2分の1を下回った場合、過去期間代行給付現価の2分の1と最低責任準備金の差額のうち5分の1が国から交付される。さらに、最低責任準備金が過去期間代行給付現価の4分の1を下回った場合には、過去期間代行給付現価の2分の1と最低責任準備金の差額が全額一括して国から交付される。
- 最低責任準備金は、免除保険料率の凍結解除後においても「現在行われている過去法に基づく方式」で算定するものとされ、基金を設立している事業主に対して、免除保険料を超える代行部分の負担は発生しない。
2.企業会計基準の見直しの必要性
日本公認会計士協会の「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」(平成11年9月)では、「凍結期間が解除されたときに事業主に負担が及ばないこと等、基本的な前提を変える制度改革があった場合には、結論を再検討すべきと考える。」とされている。
今回の厚生年金保険法の改正により凍結が解除され、基金を設立している事業主に「最低責任準備金を超える代行部分の債務がない」ことが明らかになったことから、この改正は「基本的な前提を変える制度改革があった場合」にまさに該当するものであり、企業会計基準を見直すことが必要である。
具体的な取扱いとしては、厚生年金基金の代行部分を退職給付会計基準で定める退職給付の対象外とする必要があると考える。
以上